「国立大学の再編統合の意義」

講師 : 岩手大学長  海妻 矩彦 先生

平成14年5月18日(土) 「エスポワール岩手」

   北東北3大学統合の話が進んでいる。国立99大学の法人化は会社のような企業体への統合ということだ。実際は2004年からそうなるはず。法人化すると文部科学省と協議の上、中期目標(6年)を設定して実績評価する。目標は社会に対する約束であり、その達成度が予算にはねかえる。その予算を研究設備に使う、人件費、経費に使うといったことは大学に任せられる。したがって交付次第では給料が下がる、上がることが有り得る。潰れる大学も出てくる、栄える大学も出てくるだろう。何故いま、こういうことをしなければならないのか?これまでは、予算を残さず使い切る、あてがい扶持で楽な状態だった。しかし国際化、情報化、少子化の進展で、優秀な学生が海外に逃げて行くことが考えられる。現にITを活用してMITのような大学が国内にも入って来ている。税金の使い道も成果の上がるところにお金をつけていく。大学は経営の力量と教師陣の努力を問われることになる。ただし学長はじめ少数のTopには大きな権限が与えられる。経営に詳しい人の招聘も必要になろう。

[1]北東北3大学連携推進会議の状況

 3大学を統合して新しい大学を作ろうとするのは、規模を大きくすることによって他大学に負けない成果を出して行かないと生き残れないからだ。決して統合をもてあそんでいるのではない。分野によっては東北大学をも凌駕する大学を目指す。いま4つの専門委員会を設けて検討している。実は第5の委員会を設置して再編・統合の議論をしようと私が提案したが、次期尚早ということで懇談会を設置することになった。学長、副学長など各大学から3名、計9名で既に3回会合し、フリーディスカッションを行ってきた。5月20日が4回目でここで結論をまとめ、5月22日に盛岡で行われる連携推進会議で私が議長を務め,懇談会提案を議論、決定することになっている。このようにスケジュールはのんびりしたものではない。

[2]全国の動き

 来年山梨大学と山梨医科大学が統合する。図書館情報大学と筑波大学も来年だ。医学単科大学と近隣の総合大学が統合する動きが進んでいる。香川、高知、島根などだ。群馬大学と埼玉大学が我々の後を追って県境を越えての合併に動いている。文部科学省は北東北3大学の動きに注目しており、今のところはまだ精神的にだが応援してくれている。遠山敦子文科大臣も、北東北の動きに少しでも変化があったら直ちに報告するようにと厳命していると聞く。合併・統合は距離の遠さ、時間、お金などの問題を抱える。農学部は岩手と弘前にあり、医学部は弘前と秋田にある。教育学部は師範学校からの歴史的背景で各県にあるが、少子化によって100名を割り込むところが増えている。学生数が少なければ学部としての活性が失われる。秋田大は教育文化学部という名前だが、統合によってどこかに本部が置かれる。どこかを核として他はそこに統合する形になる。

 全国で4割の大学が今統合を検討中だ。しかし東京外語大、芸大、一橋大など5大学の統合は停滞しているようだ。

[3]再編・統合は何故必要か?

 日本99国立大学、名称は様々だが、文部科学省のもとひとつの大学の扱いである。そのなかでまず東大、次に京都大というように予算をつけ、岩手大学に回ってくるのはずいぶん後になる。これをバラバラにして大学を独立させようというのが主旨である。大学は学術・文化の総合性がなければならない。岩手は文系が弱く、医学もない偏った大学である。これを総合的な大学にしなければならない。あらゆる学問が、その大学に行けば学べるものでなければならない。

 最後に学長在任6年の間に掲げてきた理念「ひとつの大学にする」ことの成果に付いて述べる。4つの学部が独立しているのではなく、それぞれの隔壁を取り除こうとしてきた。非常に難しかったが、事務局の統合(定員削減の手段だけではない)はできた。高等農林と工専の敷地がそのままキャンパスの管理区域となっており、教育学部が農学部の敷地の中にできて区域割りがハッキリしていた。敷地の境界をめぐる問題が起きたりした。まずこれをやめさせた。学生寮については学部毎に4つの寮があり、男性寮と女性寮は仕方ないが、基本的に統合することで、古い建物を新しくするときにはひとつの寮にしようと提案した。難航を予想したが今の学生はスンナリ受け入れてくれた。評議員会は各学部5名プラス学長で21名構成になっている。これが学部の利害調整の場になってはならないと考え、各学部からの人数を減らしてもらい、図書館長や地域共同研究センタ−や生涯学習センターの所長を入れた。

 できなかったのが学部の自治の問題だ。これは鎧のようなもので、耳を貸してもらえない。頑として抵抗する。学部の自治は打破する必要がある。大学の自治は必要だが、これを守るには実績を挙げて行かねばならない。研究,設備面で全国から注目される大学になって行かねばならない。

Q&A 1件

[Q]日本の大学の8割は私立だ。1県1大学の国立大学というのには意義があると思う。大学の再編・統合について国民に議論が見えない。2年で転換していくという遠山敦子文科大臣の改革は性急過ぎるのでは?最後に、再編・統合で本当に良くなるのか?と聞きたい。

[A]国民に見えないのではない。今はインターネットでいくらでも情報が取れる時代だ。公に大きく取り上げられないというのは、国民が国立大学に対して大した関心をもっていない証拠だ。良くなるためには大改革しなければならない。1県1大学はおかしい。50年前に始まったこと、それを壊さねば改革はできない。行政にしても県の枠を越えて考えねばならぬ時代になった。

(文責:澤藤隆一)

参考:文部科学省「国立大学の構造改革の方針」について → クリック