講演会:テーマ『岩手大学における産学官連携の現状と展望』

講師:岩手大学工学部情報システム工学科 教授 千葉 則茂先生          

[講演要旨]

   本日は液晶プロジェクタを使用して説明する。情報システム工学科千葉研究室のホームページから30分毎の岩手山の今の画像、そして過去の画像が見えますよ(笑…会場大受け)--->こちらをクリック  下図上部写真のように見えます。ただし夜は真っ暗闇の画像になりますよ(^_^)

   岩手大学の建物も随分変って来た。上の画像参照

産学官連携の理想と現実を考えると、なかなかうまく行かないというのが実際なのである

岩手大学は活発に活動してきた。共同研究数では国立大学ではトップクラスだ。もっとも数で誇る時代ではないが…

CG作品

樹木データを上記例のように様々に応用する。庭にどんな樹木を植えようかな?

産学官連携の成果は製品となって普及して欲しい

補助金がついて共同研究へ…しかし企業が複数あると、そのうち1社が抜けた場合、その権利問題があってその後の成果物利用が難しい。

 

昔は設備が欲しかった。高価だから、例えばスーパーコンピュータを導入した大学にはかなわなかった。業務用ビデオだってすごく高価だ。しかしダウンサイジングとCPUの高性能化が進んで今はパソコンで研究ができるから、頭脳の勝負になってきた。そうなると設備より人件費が欲しい。

お役所の言うことは無理難題とも言える。こんな条件に適合するテーマなんてありますか?

大学との共同研究の成果がすぐ売れるものは無いと思ったほうが良い。

米国では学会発表したらすぐ商売にする速さあり。基礎研究から製品化に直結する。

日本では官の担当者が部署替え、転勤で短期に変るのが問題。やっと理解してくれたと思ったら、また「ご破算で願いましては…」

研究室の立場から言えば大学から頂く資金には限りがあり、充実した研究と、その中から成果を出して行くために外部資金はどうしても必要だ。有名な先生がいて、潤沢な資金を有する研究室はごくわずかだ。したがって産学官連携を行い、資金導入を図る。しかしもうそろそろテーマ数で競うより、成功例をいかに増やすかという時代に入っていると感じている。

なぜ再編統合で大きな大学になったほうが良いか?大企業はゆとりがあって福祉やメセナに金を出すことがある。中小企業はそれどころではない。大小に関わらず管理等にかかる手間は同じだから大きなほうがゆとりが出るのだ。

このまとめがすべてである。同窓会の果たす役割は大きい。ただし望ましい産学官連携は滅多に無いことを申し上げておく。

その後千葉先生より次のように連絡が入りました。昨年度の共同研究数のランキングですが,以下のようになったそうです。旧帝大入れて12位は,なかなか健闘していると思われます。同窓の方々にも良いニュースかと思います。
順位

大学

12年度 13年度
東京大学 228 302
大阪大学 162 204
東北大学 140 187
名古屋大学 159 169
京都大学 137 167
東京工業大学 115 149
九州大学 100 132
北海道大学 117 126
東京農工大学 101 126
10 山口大学 105 122
11 金沢大学 78 108
12 岩手大学 92 105
13 京都工芸繊維大 73 99
14 神戸大学 80 95
14 徳島大学 74 95
16 静岡大学 83 93
17 横浜国大 67 89
18 山形大学 53 88
19 名古屋工業大学 55 86
20 岐阜大学 54 84
東北地区 弘前大学 23 51
秋田大学 33 45
福島大学
宮城教育大学

 

 

千葉 則茂(ちば のりしげ)先生のプロフィール   

昭和50年 岩手大学工学部電気工学科卒業
昭和50年〜53年  日本ビジネスコンサルタント(現,(株)日立情報システムズ)
昭和59年 東北大学大学院博士課程情報工学専攻修了,工学博士
昭和59年 東北大学工学部 助手
昭和61年 仙台電波高専情報工学科 助教授
昭和62年 岩手大学工学部情報工学科 助教授
平成3年   同教授,現在に至る

著書: 「CによるCGレイトレーシング」(サイエンス社),
    「3次元CGの基礎と応用」(サイエンス社),
    「Cアルゴリズム全科」(近代科学社),
    「離散数学」(朝倉書店)など

研究: 昭和59年より、CGによる自然景観の映像生成に関する研究に従事。平成7年より、岩手県内の産学官研究会「マルチメディア研究会」を設立し、岩手の技術交流を推進中。また、"自然のCG"技術に基づくCGソフトやコンテンツ開発に関する複数の産学官共同プロジェクトを実施。現在、実用化研究プロジェクトとして、通信・放送機構(TAO)実施の地域提案型研究開発制度「バーチャル・ロケーションを可能とする高度なCG技術の研究開発」を地元企業とともに推進中。

(文責:澤藤隆一)